リンパ管疾患 リンパ管疾患について
さまざまなリンパ管疾患の特徴~2
リンパ管腫症(GLA)
リンパ管腫症(GLA)は病変が一ヵ所に留まらず、全身の臓器など、さまざまな箇所に出現する点がリンパ管腫と異なります。リンパ管の一部が異常に拡張し、そこからリンパ液が漏れ出て体内に溜まり、さまざまな問題を引き起こします。出生時から確認されるケースも稀にありますが、全国調査の結果※などから発症のピークは10歳くらいといわれており、病変、症状ともに進行します。また骨の中心部(髄質)が溶けるという特徴もあります。治療はさまざまな対症療法に加えて、薬物療法の報告が増えています。
そうしたリンパ管腫症の中に、非常に進行が速く重篤となる症例が認められており、カポジ型リンパ管腫症(KLA)とも呼ばれています。血小板の急速な減少や血液の凝固異常など、検査結果が特徴的ですが、採取した組織に特徴的な像があって診断されます。
ゴーハム病(GSD)
ゴーハム病(GSD)もまた、小児、大人ともに発症することがある疾患です。最大の特徴は病変部の骨が表面から溶けてしまうことで、骨の溶解は骨全体に広がり、次第にその隣の骨も同じように溶けて広がっていきます。また溶けていく骨の周囲には異常なリンパ管、もしくは血管の組織があることが知られています。これまで説明したリンパ管腫症、カポジ型リンパ管腫症、ゴーハム病の治療はとても似ており、リンパ液が漏れてしまうということに対する栄養療法(高カロリー輸液の点滴や高たんぱく食の摂取等)、それから対症的な外科的切除に加え、薬物療法も検討されます。
リンパ管拡張症
リンパ管拡張症は、体の一部のリンパ管が非常に拡張し、リンパ液が一方向に流れなくなって、管の外に漏れ出て胸水(乳び胸)や腹水(乳び腹水)を引き起こす疾患です。小児から若年成人に発症することが多く、肺や腸間膜などが、病変が生じるところとしてよく知られています。リンパ管腫症やゴーハム病との鑑別が難しいことがありますが、骨の病変はない点が異なります。
原発性(先天性)リンパ浮腫
最後に、原発性(先天性)リンパ浮腫は、リンパ管の形成が未熟で細かったり、発生していなかったりすることにより、リンパ液をちゃんと運搬できないため、主に手足の末梢で浮腫が起きる疾患です。原因にはさまざまな遺伝子が関わっていることが分かっていますが、根本的な治療法は確立されていません。圧迫療法(弾性ストッキングなどの弾性着衣によって手足のむくんでいることを広く圧迫すること)を続けることは病気の症状の悪化に対して効果があると分かってきています。
リンパ管疾患の中には、お話ししたそれぞれの疾患の中間の性質を持つ疾患があり、診断が難しいのですが、近年の研究により、徐々にその境界がはっきりして区別できるようになってきています。世界中の医療チームが、疾患の解明、治療法の開発に取り組んでいます。
※出典:平成25年度 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
「リンパ管腫症の全国症例数把握及び診断・治療法の開発に関する研究」研究代表者 小関道夫
慶應義塾大学 医学部 外科学教室 小児外科
藤野明浩先生 監修