リンパ管疾患 リンパ管疾患について
さまざまなリンパ管疾患の特徴~1
リンパ管疾患の特徴
リンパ管腫(リンパ管奇形)は、ぶどうの房のように大小のリンパの袋(嚢胞)が寄り集まってコブ状のかたまりとなる疾患です。先天性で、多くは小児に発症します。発生しやすい部位は頸部、縦隔(左右の肺の間)、腋窩(わきの下)で、腫瘍ではないのでどんどん大きくなっていくことはありません。ただ自然に退縮する(小さくなる)ことは少ないといわれています。患者さんの数に男女差はなく、遺伝もしません。近年、PIK3CAという遺伝子の変異が、多くの患者さんの病変内にあることが分かり、発症と関係があるのではないかと考えられています。
リンパ管腫は悪性疾患ではなく、必ずしも治療しなければならないわけではありませんが、見た目(整容性)の問題や、呼吸がしにくい、消化や便通が悪いといった機能的な問題、また痛みや腫れなどの症状の問題、これらの一つでも困っている場合には、治療を選択する理由になると考えられます。
リンパ管疾患の治療
治療においては、緊急性がなければ、まず自然に嚢胞が小さくならないか経過観察した後、硬化療法、外科的切除、内科的治療(薬物療法)などを、症例にあわせて選択します。そのうち硬化療法は、嚢胞の中に薬剤を注入してつぶしていく治療法です。嚢胞が大きいタイプ(嚢胞状、マクロシスティック)に効果的ですが、嚢胞が小さいタイプ(海綿状、マイクロシスティック)には効きにくいことが分かっています※。
外科的切除は手術で病変を取り除く治療法です。手術で病変を完全に取りきることができれば、短期間で完治します。しかしリンパ管とともに、病変も複雑な形に広がっていることが多く、完全に取り除くことは難しいことが珍しくありません。海綿状の病変が多く硬化療法がなかなか効きにくい場合、左右のバランスや突出を改善するために部分的な切除を選択することは好ましいと考えられます。これらに加えて近年、薬物療法の研究が発展し、治療の選択肢に加わっています。
厚生労働省の研究班での調査では、初診時に重症の患者さんは10%ほど、重症ではなくても治りにくい方は約20%と、一部の患者さんは非常に治り難いことが判明しています。ただ大半の方は予後が良いことも分かっています。
- ※出典:血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017
慶應義塾大学 医学部 外科学教室 小児外科
藤野明浩先生 監修