縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー) 病理からみたGNEミオパチー
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)の筋病理所見
- 健常人では筋線維の大きさが概ね揃っていますが、 GNEミオパチーでは筋萎縮により筋線維の大小不同が見られます。
細胞間の線維化(萎縮筋線維)、縁取り空胞の出現がGNEミオパチーの特徴的な所見ですが、封入体筋炎や眼咽頭遠位型ミオパチーなど、また偶発的にもみられる非特異的な所見です。
1)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 西野 一三先生 ご提供
2)厚⽣労働省 難治性疾患政策研究事業 希少難治性筋疾患に関する調査研究班GNEミオパチー診療の手引き
(日本神経学会理事会承認日 2020年1月31日)より転載
筋生検所見
- シアル酸生合性の低下が筋変性を生じる機序としては、細胞膜上の糖蛋白質、糖脂質のシアリル化が低下することにより酸化ストレスが生じ、タンパク質折りたたみ異常、ユビキチン-プロテアソーム系の活性化などが起こることが想定されています。
- GNEミオパチーの筋生検所見に関する診断基準は下記のとおりですが、参考所見としてアミロイド等の筋線維内の蛋白質凝集があります。
B.筋生検所見(a を満たす)
a. 縁取り空胞を伴う筋線維
(以下は参考所見)
-
- 通常強い炎症反応を伴わない。
- 筋線維内のβ-アミロイド沈着
- 筋線維内のユビキチン陽性封入体
- 筋線維内のp62 陽性凝集体
- 筋線維内のリン酸化タウ
- (電子顕微鏡にて)核又は細胞質内の 15~20nm のフィラメント状封入体(tubulofilamentous inclusions)の存在
参考:難病情報センターHP 30 遠位型ミオパチー 概要・診断基準等
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 西野 一三先生 ご提供
- GNEミオパチーでは、筋線維細胞質内にβ-アミロイド等の不特定な蛋白質の異常な凝集が見られます。
- 縁取り空胞は、その異常な蛋白質の凝集に対してオートファジーが惹起される結果として形成されると考えられています。
- 写真では、Congo red染色によりアミロイドが沈着していることが分かります。
電子顕微鏡で観察される筋生検所見(自己貪食空胞、蛋白凝集体、フィラメント状封入体)
- 電子顕微鏡では、自己貪食空胞と呼ばれる小さな空胞がぎっしり集まっている様子が観察されます。
- ユビキチン化された蛋白凝集体を排除しようとオートファジーが誘導されますが、線維性の固い構造物であるがゆえにオートファジーにより分解しきれなかった空胞である自己貪食空胞が観察されます。
- 蛋白質のひとつであるTDP-43やp62の凝集は縁取り空胞の上流現象であり、縁取り空胞とほぼ同義です。 このような現象はアグレファジーと呼ばれています。
フィラメント状線維性封入体
- さらには核内にはフィラメント状線維性封入体(Tubulofilamentousinclusion)と呼ばれる構造がみられます。
- フィラメント状線維性封入体は、他の縁取り空胞を伴う疾患でも見られ、GNEミオパチーに特異的な構造ではありません。
縁取り空胞を伴う筋疾患
- 縁取り空胞を伴う筋疾患は、GNEミオパチーのほかにも肢体型筋ジストロフィーや封入体筋炎等の疾患があり、臨床的所見や遺伝学的検査による鑑別が必要となります。
- 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)