血管腫・脈管奇形 血管腫について

血管腫について

脈管異常は大きく分けると血管腫と脈管奇形に分類されます。
ここでは、血管腫について紹介します。

血管腫にはどんな疾患があるの?

腫瘍には悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍がありますが、血管腫のほとんどが良性腫瘍で、乳児血管腫、房状血管腫、先天性血管腫などの疾患があります。

良性の腫瘍は転移や浸潤をせず、ゆっくりと増える腫瘍であり、手術で取り切れれば再発もなく治癒します。

悪性と良性の中間的な性質を持つ腫瘍として、血管内皮腫(カポジ肉腫様血管内皮腫)という病気もあります。

悪性腫瘍は非常に珍しく、血管肉腫という病気があります。非常に稀ながんであり、進行すると生命予後に影響を与える点で、良性の腫瘍とは異なりますが、本コンテンツでは取り上げません。

※浸潤(しんじゅん):腫瘍が最初に発生した部位から周囲の組織や臓器へと広がっていく現象

1.乳児血管腫(infantile hemangioma

乳児血管腫(いちご状血管腫)は乳児期で最も頻度の高い血管腫の一つで、人種を問わず女児、また早期産児・低出生体重児に多いといわれています。日本人での発症は0.8〜1.7%とされており、親からの遺伝によらない発症がほとんどです。

どこに症状が現れやすい?

発生部位は頭頸部60%、体幹25%、四肢(手足)15%と言われており、頭頸部に多いです。

※体幹(たいかん):首から上と腕と足を除いた胴体全体

どんな症状が起こる?

出生時には症状が存在しないあるいは目立ちませんが、生後2 週間程度で病変が明らかとなり、その後自然に退縮する特徴的な一連の経過をたどります。経過は個人差が大きく、治癒まで10 年を超えることも多くあります。

どのような場合に治療が必要?

以下のような、機能障害が起きる可能性が考えられる場合などは、早期に治療を検討・開始します。

  • 発生部位により気道閉塞、視野障害、哺乳障害、難聴、排尿排便困難、高拍出性心不全や体重増加不良などを来たす場合
  • 病変が大きく潰瘍を形成し、出血したり二次感染を来たし敗血症の原因となる可能性がある場合
  • 整容的に問題となる場合(顔や頭、胸、手足など露出する場所にできた血管腫)

主な治療法は?

上記のような治療が必要と判断されない場合は経過観察となり、必要に応じて精神的なサポートを行うことが治療・対応の中心になります。治療が必要と判断された場合は、薬物療法(βブロッカーなど)、手術療法(全摘・減量手術)、レーザー、塞栓/硬化療法、放射線療法、持続圧迫療法などの有効例が報告されています。

参考:血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症 診療ガイドライン2022(第3版)

⇒乳児血管腫の症例写真

.先天性血管腫

先天性血管腫は、出生時より存在し、超音波やMRIで生前に胎内で診断されることもあります。出生直後が腫瘍の大きさのピークである点が特徴である比較的稀な血管腫です。出生後に退縮するかどうかによって、以下の通りに分類されます。

〇急速退縮型
〇非退縮型
〇部分退縮型

難治性血管腫・血管奇形 薬物療法研究班 情報サイト(2025年10月現在) より作成

どんな症状が起こる?

  1. 整容的な問題
    青い・毛細血管が浮き出ることがあります。
  2. 熱感
    出生直後は病変部位がやや硬く・熱感を伴うことがあります。
  3. 血小板減少や凝固異常
    巨大な病変では一過性に血小板が減少したり、血管内に血栓がたくさんできることにより、血液を固めるための材料(血小板や凝固因子)が体内で大量に使われてしまい、足りなくなることで血が止まりにくくなることがあります。
  4. 心不全(呼吸困難・全身むくみなど)
    巨大な病変では、全身の血流に負担をかけて心不全を引き起こすことがあり、呼吸困難やむくみなどが現れたり、ひどい場合には命に係わる危険な状態になることがあります。

乳児血管腫とどう違う?

  • 大きくなる時期や症状の経過が違います。乳児血管腫は生後数週で出現し、大きくなっていきますが、一方先天性血管腫の場合は、出生直後が最も大きく、その後、急激に小さくなるタイプ(急速退縮性)とゆっくり部分的に小さくなるタイプ(部分退縮性)、小さくならないタイプ(非退縮性)があります。
  • 生まれた直後から血管腫がある場合は、先天性血管腫を疑います。

主な治療法は?

  • 急速に病変が退縮する場合:基本的に経過観察されますが、大きな病変で血小板減少や出血、心不全のような急を要する合併症を生じている場合には手術や塞栓療法を行う場合もあります。
    また、退縮までに出現する潰瘍形成や残存する瘢痕に対しては対症療法あるいは外科的治療が検討されます。
  • 病変が退縮しない場合:主に整容的な面からの切除が検討されます。

※瘢痕(はんこん):病気や傷のあと

⇒先天性血管腫の症例写真

3.房状血管腫(tufted angioma

主に乳児期に起こる※1良性型の血管腫瘍で、小さな赤~赤紫色の斑や丘疹※2、結節※3が出来て、次第に大きく膨らんでいく病気です。

※1  5 歳未満の発症が 60-70%、25%が 1 歳以前の発症とされています。一方、50 歳以上での発症も報告されています 1)
※2  丘疹:皮膚表面が小さく盛り上がった状態
※3  結節:しこり

1) Pesapane F, et al. An Bras Dermatol. 2015 May-Jun;90(3 Suppl 1):16-8.

どこに症状が現れやすい?

四肢や体幹に発生することが多いです。

どんな症状が起こる?

しばしば痛みや多汗、熱感、多毛などを伴います。後述するカサバッハ・メリット現象を合併した場合に命の危険が生じることもあるため、注意が必要です。

乳児血管腫とどう違う?

乳児期に主に起こる点は同じですが、病変が硬かったり、少しずつ大きくなったりする点が違いといえます。

主な治療法は?

見た目の問題や痛みなどの問題がなく無症状であれば経過観察されることも多く、自然に治ることもあります。

治療を要する場合は、外科的治療、 色素レーザー、放射線照射、持続圧迫療法、塞栓術、薬物療法(分子標的治療薬など)が選択されます。

⇒房状血管腫の症例写真

.血管内皮腫(カポジ肉腫様血管内皮腫)

血管腫瘍の一種で、いくつかの種類があります。代表例であるカポジ肉腫様血管内皮腫は主に乳児期に起こり、皮膚などが紫色や赤紫色に盛り上がって腫瘤のようになる病気で、発生頻度は100万人あたり9人と稀な疾患です。

カポジ肉腫様血管内皮腫は良性と悪性の間の性質を持つため、悪性ほどではないですが、増えるスピードがやや早く、正常な臓器に浸潤することがあります。

約半数は生まれたときから病変が存在しており、多くは1歳までに発症します。

どこに症状が現れやすい?

四肢や体幹などの皮膚から皮下組織に発生することが多いものの、関節や内臓などに発生することもあります。

どんな症状が起こる?

周囲に染み込むように広がる傾向があって、皮膚が赤黒く変化したり、硬い腫瘤となったりして、筋肉痛や関節の動く範囲が狭くなることを招くケースもあります。また、房状血管腫と同じようにカサバッハ・メリット現象を合併する(70%と言われています)ことにも注意を要します。

乳児血管腫や先天性血管腫とどのように違うの?

乳児血管腫や先天性血管腫と同じように、主に乳児期に発生する血管腫瘍ですが、「硬くて、どんどん大きくなる、痛みを伴う」場合には、房状血管腫やカポジ肉腫様血管内皮腫を疑った方が良いでしょう。

中には自然に小さくなるケースもありますが、悪化した場合は治療が必要となるため、注意が必要です。気になることがあれば担当の医師に相談しましょう。

鼻血など出血が止まりにくい、足に出血斑がある、腫瘍の部分が急速に大きく、硬くなった時は血液検査等で調べてもらいましょう。
異常が無かった場合も、定期的に主治医の先生に診察してもらうと良いでしょう。

主な治療法は?

  • 薬物療法(分子標的治療薬など)
  • 輸血

カサバッハ・メリット現象(症候群)について

カサバッハ・メリット現象は、カポジ肉腫様血管内皮細胞腫と房状血管腫に合併して起こる重篤な血液凝固異常です。

血液を固める成分である血小板が異常に固まってしまい、血小板が足りなくなって血が止まりづらい状態となる現象です。出血や多臓器不全などが命にかかわることもあるため、原則、入院が必要です。

小児期、特に新生児期から乳児期に発症することが多く、生まれた時から大きな単一の病変が存在していたり、乳児・幼児期に増大したりします。小児慢性特定疾病の対象となっています。

監修
岐阜大学 医学部附属病院 小児科 臨床准教授 小関道夫先生

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